今月の主題 肝炎
話題
TTウイルス
岡本 宏明
1
Hiroaki OKAMOTO
1
1自治医科大学予防生態学,分子ウイルス学研究部
キーワード:
TTウイルス
,
TTV
,
1本鎖DNAウイルス
,
遺伝子型
Keyword:
TTウイルス
,
TTV
,
1本鎖DNAウイルス
,
遺伝子型
pp.319-323
発行日 1999年3月15日
Published Date 1999/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904028
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1.はじめに
TTウイルスは,1997年にわが国で原因不明の輸血後肝炎の患者血清から分離されたパルボウイルス様の新しいDNAウイルスである.PCRを応用したrepresentational difference analysis (RDA)法1)という,"引き算"による分子クローニングの手法を用いて,肝炎発症前の血清中には存在せず,肝炎急性期の血清中にのみ存在する特異遺伝子としてN22クローン(500塩基長)が釣り上げられた2).そのN22遺伝子断片の塩基配列を手がかりとして,新規のヒトDNAウイルスが同定された.そして,そのウイルスは発見の契機となった患者のイニシャル(T.T.)を冠して,暫定的に"TTウイルス(TTV)"と命名された2).その略称,TTVは偶然,transfusion-transmit-ted viruses (血液伝播性ウイルス)の略称とも一致しているが,TTウイルスは輸血用血液や血液製剤を通じて血行感染し2~4),血液伝播性ウイルスとしての特徴を有するだけでなく,糞便中にも排泄され5),経口感染によっても伝播しうるユニークなウイルスである.
本稿では,現在までに得られているTTウイルスの分子ウイルス学的ならびに臨床疫学的な知見について概説する.
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