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現在,医師不足もしくは医師の偏在が大きな社会的問題になっています.私が住む東北地方の住民10万人あたりの医師数は210名と全国平均の238名を大きく下回り,私の周りでは,科を問わず医師不足が日常的に大きな問題となっています.それでは,脊椎・脊髄疾患を手術(脊椎手術)する整形外科医の数はどうでしょうか.脊椎手術を行う整形外科医の偏在はあるのでしょうか.検討してみました.
整形外科で行われる脊椎手術のほとんどが,日本脊椎脊髄病学会指導医により執刀されるか指導医の指導下に行われると考えられます.現在の日本脊椎脊髄病学会のHPに載っている指導医リストから拾うと,全指導医数は1,315名,住民10万人あたりの指導医は1.03名です.各県ごとに10万人あたりの指導医数を分析すると,必ずしも10万人あたりの医師数とは相関しません(表1).10万人あたりの指導医が最も多いのは和歌山(2.35人,10万人あたりの医師数では9位),2位徳島(1.82人,医師数1位),3位富山(1.67人,医師数21位)でした.指導医が少ないのは,1位三重(0.55人,医師数37位),2位埼玉(0.61人,医師数47位),3位茨城(0.72人,医師数46位)でした.これらの県では医師数,指導医数とも少ないといえます.10万人あたりの指導医数に関して,最大で4.3倍の偏在がみられます.都道府県の面積から,指導医1名あたりの面積を求めると,指導医1人で最も多くの地域をカバーするのは,岩手(1,237km2)で,2位北海道(1,060km2),3位島根(958km2)でした.これらの県では,患者が脊椎手術にアクセスしづらいと考えられます.面積が狭いのは1位東京(14km2),2位大阪(22km2),3位神奈川(28km2)でした.東京では4kmに1人指導医がいることになります.全医師に対する日本脊椎脊髄病学会指導医の割合をみると,1位和歌山(0.83%),2位秋田(0.74%),3位山梨(0.73%)で,これらの県では脊椎外科医が比較的ポピュラーといえます.低いのは1位三重(0.26%),2位岡山(0.30%),3位兵庫(0.32%)でした.
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