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10月から11月にかけて国立病院機構(NHO)九州グループの人事担当参事M氏は多忙を極める.南は沖縄から北は小倉まで,九州の28病院および九州管内の国立ハンセン病療養所5施設の全ての院長から,4月の人事異動にかかる意見を聞きとったうえで人事異動案をまとめあげる作業をしなければならない.NHO九州グループの職員数は約10,600人でM氏が担当するのは医師以外の約9,300人である.看護師や放射線技師,薬剤師などそれぞれ職種別の専門職が担当する職種の中で,退職や産休,転勤希望などの情報を収集して異動案をつくる.M氏はそれを取り纏めて全体案を作成し,病院巡りを経て最終案を固めるという作業をするのだ.このような作業のおかげで,地方の病院でも必要なスタッフが確保されることになる.医師の場合に問題となるような地域医療におけるマンパワーの偏在は,NHOの医師以外の職種に関しては存在しない.九州の南端の病院であろうと山間部の病院であろうと,地域的な理由だけで人が手薄になるということはない.2018年4月1日付の人事異動の件数は485件であったが,ほとんど問題は起こっていない.この異動のシステムが機能している理由として,①3~4年毎に異動があること,②異動の命令が片道切符ではないこと,③NHOの福利厚生や労働環境が比較的恵まれていること,そして何より④異動の対象となるマンパワーのプール(人数)が大きいことなどがあげられる.おかげで,看護師さんに限らず全ての職種で産休や育休をとることが可能になっている.いろいろな学会で「男女共同参画」が大きなテーマとなっており,出産や子育てをしながらキャリアを続けるにはどうすればよいかが議論されているが,NHOに関しては,「医師以外は」という但し書き付きだが問題はないように思う.
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