研究と資料
マラリアの地域的偏在に關する一考察
細井 輝彦
1
1東京都衞生局防疫課
pp.405-409
発行日 1949年5月25日
Published Date 1949/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200466
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本邦の土着性マラリアが水田地帶に多いことは,一般に認められているところであるが,水田地帶ならどこでもマラリアが多いかというと,決してそうでない。東京都の水田地帶は,荒川と江戸川との流域で,足立・葛飾・江戸川・板橋の4區にまたがるものが最大であり,これに次いで北多摩・南多摩の多摩川流域がある。ところで近年の都内マラリア新感染は,過半數が江戸川1區のみからでており,しかも同區の南半東寄りに集中されていて,その他の水田地帶では少數が平均に散在しているに過ぎない。
このような水田マラリアの地域的偏在は,どうして起るのであろうか。マラリアの浸淫度を支配する因子としては當然,住民と蚊族の兩方を考えねばならない。しかし住民の生活状態に關する限り,江戸川區は他の水田地帶と大差ない。從つて問題は傅播蚊たるAnophelesの發生状況にかかつてくるのである。
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