連載 ニュースウォーク・73
医師偏在が生むもの
白井 正夫
1
1元朝日新聞編集委員
pp.414-415
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100492
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種子島の海沿いのまち,鹿児島県西之表市住吉に「漂泊のガジュマル」と呼ばれる大樹が根を張っている。かつて島を旅して,この大樹と寄り添っている家で,90歳になるおばあさんからお茶をごちそうになり,ガジュマルの話を聞いた。「100歳で亡くなった母が子どものころには,もう大きかったそうですよ」。海を越えて流れ着いたという話だった。
あれから12年,ひょんなことから西之表で病院を経営する熊毛地区医師会長,田上容正さんと手紙を交わした。島の名の懐かしさからガジュマルとおばあさんのことを書いたら,思いがけない返事が届いた。田上さんは100歳近くになられたおばあさんを何回も往診し,その最期をあの大樹に包まれた家で看取ったのだという。それを知り,おばあさんの満足を思った。
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