視座
医師不足? 偏在?
石黒 直樹
1,2
1名古屋大学
2名古屋大学大学院医学系研究科機能構築学医学専攻運動・形態外科学
pp.211-212
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408100262
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昨今,病院長と話す機会があると必ず,医師不足の話になる.しかも常に特定の診療科に限って不足している.都市部の病院よりも地方都市の基幹病院(市民病院クラス)にその傾向が強い.しかし,本当に医師は不足しているのであろうか? 少なくとも過去10年以上にわたり明らかに医師数は充足されているのが現実であろう.ともかく医学部数は増加し,1年間に医師資格を取得する者の数は減っていない.では昨今急速に問題化しつつある医師不足の本当の原因は何であろうか?
私事で恐縮だが,名古屋大学整形外科に入局する若手医師もピークから比べると4割減っている.胸部,腹部外科では同様な傾向がより如実に示されている.整形外科医師を含めて外科系医師を志す者が減っているという実感を持っている.一方,内科では診療科ごとの浮き沈みがあるという.そこでは,どうも忙しい,夜間緊急が頻発する科目が敬遠され,比較的落ち着いている科目に入局が増えるという傾向がみられる.名古屋地区の大多数の公立病院では忙しく,たとえ人の2倍働いたとしても,さほど収入には反映されない.おそらく全国同じような状況であろう.肉体的疲労・危険性が伴うにもかかわらず,経済的には保障されていない.正に3K職場である.これでは忙しく,夜間の呼び出しが多い診療科に進もうとする若い研修医師が増えないのも当然であろう.皮肉なことに忙しい科ほど社会的なニーズが高いにもかかわらず,研修終了後の医師が選択しない傾向にある.今のコマネズミ状態は改善される気配をみせないのではないかと思う.
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