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作業療法士の強みとは
2020年(令和2年)4月,私は「『やりたいこと』を発掘し『できる』を叶える」という理念のもとに社会保障外でのサービスを創業した.サービスの内容は,障害を有する方に対して,アシスティブ・テクノロジー(assistive technology:AT)の適合や3Dプリンタ等を活用した自助具の製作等,対象者の作業の実現に向けて主にその環境を整える支援をしている.たとえば,脊髄性筋萎縮症を有する高校生に対して,大学進学や就労に向けてわずかに動く両母指の動きでパソコン操作ができるように支援したり,特別支援学校に通う児童が自身で宿題に取り組める自助具を製作したりと,さまざまな疾患,障害を抱える方と共に対象者の可能性を考えて取り組んでいる.また,個人への支援だけでなく,訪問診療のクリニック,訪問看護ステーション,放課後等デイサービス等の支援事業所との業務提携による利用者への支援も行っている.さらに,ユニバーサルeスポーツのイベント,難病相談支援事業,国際福祉機器展の講師等,保健所や特別支援学校,行政機関からの受託事業にも取り組んでいる.
支援の中心は,ATの選定・適合となっているため,テクノロジーの活用方法や導入した機器そのものが注目されやすい.しかしながら,実際に支援して思うのは,こうした支援機器に精通することとともに,対象者の作業を分析し,ヒト・コト・モノの相互作用を捉えて,作業のあり方を調整することが重要ということである.ATは対象者の生活を豊かにするための非常に有効な手段であるが,それを可能にするためには作業そのものを丁寧に評価していることが大前提となる.この思考過程がどの領域にも共通する作業療法の根幹であり,強みであると思う.
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