特集 キャピタル・コストの確保をめぐって
求められる社会資本整備
本間 正明
1
,
跡田 直澄
2
1大阪大学経済学部
2名古屋市立大学経済学部
pp.425-427
発行日 1994年5月1日
Published Date 1994/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901226
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社会資本整備の遅れ
80年代の前半から中期にかけて,政府の財政再建がそれなりの成果をあげたことは確かである.しかし,このような財政再建路線のあおりをうけて,社会資本整備という資源配分上の機能を80年代の財政は十分に果たすことが出来なかった.公共投資の対GNP比率はピーク時には10%近くにも達していたのに,80年代後半には6%台にまで低下した.この公共投資の相対的低落は,80年代後半の旺盛な民間投資比率を大幅に下落させた.
この下落は,高齢化社会の本格的な到来が予想されるわが国にとって,きわめて重要な意味を持っている.現在では依然として高い貯蓄率を誇るわが国であるが,高齢化社会への移行に伴い急速に貯蓄率が低下するという指摘が多くの識者からなされている.この点を考慮すれば,高貯蓄を誇っている今こそ,豊かな高齢化社会を実現する準備として,国民の生活環境を向上させる下水道や鉄道網の整備などの従来型社会資本だけでなく,高齢者に質の高い医療・福祉サービスを提供できる病院,老人保健施設,特別養護老人ホームなどの新社会資本にも,その高貯蓄を代えておく必要がある.高い貯蓄率をこのような社会的インフラの整備に有効に生かす資源配分上の役割が,90年代中期の財政運営に求められていることになる.
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