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編集後記
西出 康晴
pp.550
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203815
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自宅の本棚の片隅には,『子どもの発達と感覚統合』『感覚統合と学習障害』の2冊の本がずっとたたずんでいる.この特集にあたり,何年振りかで本棚から手に取ってみた.中を開くと,日に焼け,黄ばみがある.ところどころに意味不明な書き込みもあった.裏表紙には,購入した日付と名前が書かれている.日付から,養成校の1回生のころであることがわかる.学生時代,感覚統合療法のクリニックが学校の施設内で開かれ,発達障害領域に関心のある学生がボランティアで参加し,教授らの指導を受けることができた.参加にあたり,教授から薦められたのが前述の2冊の本を読んで勉強することであった.少ない時間ながらも,学生の間に臨床体験をできたのは貴重であった.しかしながら,経験がない分,その療法を学ぶにつれ,その理論で解釈すれば,どんな子どもにも応用できるのではないかという錯覚にも陥った.
卒業後,病院にて発達障害児の作業療法に従事したが,感覚統合療法を実際に行う機会がなかった.ただ,作業療法を行ううえで,その理論や解釈は有効に活用していた.自分自身の作業療法の基盤の一つとなっていたかもしれない.その後2つの衝撃的なできごとがあった.1つは,1989年のAJOT誌でA. Jean Ayres氏の訃報を知ったこと.もう1つは,Ayres没後20年以上も経ってから,米国小児科学会から感覚統合療法に関するpolicy statementが出されたことであった.自分の作業療法の成り立ちそのものを揺さ振られた思いを2度味わった.
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