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わが国の一般家庭にパソコンが普及したのは,1995年(平成7年)のWindows 95 OS発売が契機であった.その後,テクノロジーは現在に至るまで革新的な進化を続け,新しい道具の概念を絶えず世間に発信し続けてきている.その代表ともいうべきスマートフォンは,今やわれわれの生活必需品だ.人々の暮らし方が変化する中,政府はSociety 5.0やSDGsといった政策で未来社会への転換を推進している.その背景にある人口減少時代や超高齢社会,そしてコロナ禍を経験したわが国の社会情勢においては,人々のもつ目的や価値をどのように捉えるべきなのか.作業療法の視点で俯瞰しながら考えてみたい.
2023年(令和5年)5月,感染症法における新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症に移行し,3年余り続いたコロナ禍は事実上の収束を迎えた.これまでの間,われわれは日常生活において多くの行動変容を余儀なくされてきた.その最たるものがZoomを筆頭とするミーティングツールの利活用であったと筆者は考えている.対面であった会議を遠隔に切り替えることから始まり,患者と家族の面会を非接触で行う等,その使い方は多岐にわたることとなった.1年程度でこの動向は加速度的な広がりをみせ,半永久的に続く経験として定着したと省庁が表明するまでになっていった.これに伴い,デジタル・トランスフォーメーション(以下,DX)と称される情報への価値転換も急速に進んだといわれている.DXは普及するコード決済を例に説明するとわかりやすい.購入代金を支払うこと自体は現金払いのそれと同様だが,当該決済の場合は,何に,誰が,いつ,どこで,いくら払ったか等のデータが整然と収集される点に価値がある.事業者は利潤追求のための戦略を,集積されたビッグデータの解析によって得ることができるからだ.このように,情報にかつてないほどの価値が見いだされた時代にわれわれは生きている.
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