わたしの大切な作業・第64回
畑が私を呼んでいる
ますむらひろし
pp.1007
発行日 2023年8月15日
Published Date 2023/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203496
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40年ほど前に林の外れに家を建てたとき、自転車で近くの小さな畑に水を運ぶオジさんが居た。休みの日など、あんまり行き来するので気の毒に思い、「うちの水道使ってください」と言ったが遠慮された。オジさんは何だか軽やかで、水運びすら楽しかったのだろう。
やがて宅地開発され畑も林も消え、オジさんの姿は見なくなったが、近年の私は庭の畑作りにハマっている。もともと畑は奥方が始めたもので、私は時々渋々手伝っていたが、数年前ジャガイモを初めて収穫した時、掘っているとゴロリと土中から現れる姿やその大きさに痺れた。これは立派な宝探しではないか。そうして収穫した芋のウマいこと。初めての長芋の収穫も参った。ふたりで折らないように注意しながら掘っていたが、掘っても掘っても深く伸びていて、ついにはふたりで嬉しくて笑い出した。
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