特別寄稿
反省期を迎えた世界のホスピス運動—現代ホスピスのバックグラウンドを知るために・1
岡村 昭彦
pp.499-505
発行日 1982年8月25日
Published Date 1982/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907707
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はじめに
本誌の6,7月号と2回にわたって分載された‘ホスピスを考える’という,季羽倭文子さんとの対談を通じ,私は1963年以来,激動する世界をニュースとして報道し続けてきた1人の人間として,いささか責任を感じ続けていました.それは,近代ホスピスを生み出した大切な歴史のバックグラゥンド—イギリスの植民地支配下にあった19世紀のアイルランドという生きた世界史が,日本の看護婦さんたちには全く理解されていないままに,いきなり1960年代にイギリスではじまった《現代ホスピス運動》だけが,最新の医療技術の知識として伝えられている,という異常さでした.
このように,近代ホスピスの歴史の歩みが正確にとらえられていないために,今日の世界のホスピス運動が,どのような発展段階にあるのかも,日本の看護婦さんたちは知らないままに,ホスピスを語らせられるような状態にあります.冷静に考えてください.1967年にイギリスのロンドンに創立されたセント・クリストファーという新しいホスピスでさえ,もう15年という時間を刻み終わっているということです.すでに10年以上の歳月を経たイギリスの現代ホスピスの運動には,反省期が訪れ,その反省の上に立って,ホスピス運動の未来を展望しようという,貴重な検討が行われ,その資料は昨1981年末に出版されています.
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