講座 感覚の問題に注目しよう!・第3回
自閉スペクトラム症における感覚の問題の位置づけと医学的対応/コラム:自分の思いを伝えることが苦手だった女児が,主体的に感覚過敏に取り組んだ過程
熊崎 博一
1
,
野間 沙花
2
Hirokazu Kumazaki
1
1国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所児童・予防精神医学研究部 児童・青年期精神保健研究室
2東北文化学園大学
pp.1214-1221
発行日 2020年10月15日
Published Date 2020/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202285
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感覚という視点の重要性質
2013年に発刊された「DSM-5」において,それまで自閉スペクトラム症(autism spectrum disorders:ASD)の診断基準に入っていなかった感覚の問題が,新たに診断基準に含まれるようになった.感覚の問題は,適応行動1),日常生活動作2),食事3),睡眠4),限局的・反復的行動5),不安症状6)等と関係が深いことが知られている.臨床場面では感覚の問題を切り口とすることで,その症状の機序についての説明がクリアになることも多い.感覚の症状が軽減すれば,こういった問題が改善できるという期待もある.
一方で感覚の問題が起こるメカニズムや治療方法は解明されておらず,今日まで医師の間でASDの感覚の問題はまだ十分に理解が浸透されているとはいえない現実がある.筆者は,発達障害の診療を主な専門とする児童精神科医であり,感覚の問題の中でもとりわけ嗅覚を専門としてきた研究者でもある.本稿では自身の臨床および研究の背景を踏まえて,感覚の問題の科学的評価と医学的対応について述べていく.
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