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Key Questions
Q1:脊髄小脳変性症の病態と運動失調の特徴は?
Q2:脊髄小脳変性症に対する作業療法における評価とリハは?
Q3:進行性疾患に対する生活支援の方法は?
脊髄小脳変性症の病態と運動失調の特徴について
脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)は小脳性の運動失調を主症状とするさまざまな変性疾患の総称であり,病理あるいは遺伝子的な違いによって複数の病型が存在する.日本における患者数は全国で4万人以上と推定されており1),その中の1/3が遺伝性,2/3が非遺伝性(孤発性)である.遺伝性のSCDの多くは常染色体優性遺伝であり,脊髄小脳失調症(spinocerebellar ataxia:SCA)の1型から48型(一部欠番あり)に分類されている2).一方,孤発性の2/3は多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)であり3),残りは皮質性小脳萎縮症と診断される.さらに,遺伝性,孤発性ともに小脳症状のみが主となる純粋小脳型と小脳以外の病変と症状が主となる非純粋小脳型に下位分類分けされる.遺伝性の分類では,常染色体優性遺伝性に含まれるのがSCA1,2,3(マシャド・ジョセフ病,Machado-Joseph disease:MJD),6,7,17,歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral-pallidoluysian atrophy:DRPLA)である.SCA1は緩徐眼球運動,構音障害,痙性,腱反射亢進,SCA2は眼振,緩徐衝動性眼球運動,SCA3は痙性,ジストニア,眼振,パーキンソニズム,SCA6は運動失調,SCA7は網膜色素変性,痙性,SCA17は認知症,精神症状,アテトーシス,DRPLAはミオクローヌス,アテトーシス,認知症,てんかん等の症状がみられる.一方,常染色体劣勢遺伝性にはフリードライヒ運動失調症があり,運動失調,構音障害,側弯症等が知られている.また.孤発性におけるMSAのうちオリーブ橋小脳萎縮症(olivopontocerebellar atrophy:OPCA)は運動失調,線条体黒質変性症は筋強剛,無動,姿勢反射障害,シャイ・ドレーガー症候群は自律神経症状がみられる.
運動失調の特徴としては,四肢の測定異常と動揺,2関節運動時の動作の分解,運動パターンの切り替えの遅延,姿勢保持困難等があり,これらによって,上肢機能障害や起居動作,歩行の障害等を引き起こし,日常生活動作(ADL)全般の遂行に支障をきたす.一般に,SCDにおける運動失調の進行は緩徐である.しかしながら,現状では根治につながる治療法は未確立であり,病状の進行に合わせたリハが重要となる.
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