今月の主題 臨床医のための神経内科学
治療の現状
脊髄小脳変性症
祖父江 逸郎
1
Itsuro Sobue
1
1名古屋大学医学部・第1内科
pp.1310-1311
発行日 1983年8月10日
Published Date 1983/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402218387
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脊髄小脳変性症(SCD)は運動失調を主症候とし,小脳およびそれに関連する神経経路の変性を主体とする原因不明の変性疾患の総称で,その中にはいくつかの疾患が含まれる.したがって,運動失調を主症候とする症候群の中でも,代謝異常や免疫異常によることが明らかにされた疾患は含まれない.この中に含まれる疾患の分類についてはこれまでも種々の試みがなされてきたが,いずれも問題点があり,すっきりした形に整理されていない.脊髄小脳変性症調査研究班(班長;祖父江逸郎)では,暫定的であるが,表のような分類をまとめている.わが国における頻度調査では,主として脊髄型としてのフリードライヒ病などは比較的少なく,大半は主として小脳型および脊髄小脳型で占められている.表の分類中4.,5.に属するものはきわめて少ない.
さて,SCDの治療については,原因が不明で,緩徐進行性の経過をとり,これまで的確な方法がないとされていた.しかし最近,このような変性進行性の疾患についても,病態に対応するような何らかの対策を講ずることにより,ある程度の効果があることが明らかにされてきた.ことにSCDの運動失調に対しthyrotropin releasing hormone(TRH)が有効であることが祖父江(1977)により見出されて以来,脊髄小脳変性症治療剤開発研究班(班長;祖父江逸郎)において,二重盲検比較対照臨床試験が実施され,その有効性が確認された.
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