増刊号 精神科作業療法
第3章 疾患別の作業療法
4 神経症性障害の作業療法
織田 靖史
1
Yasushi Orita
1
1県立広島大学
pp.818-823
発行日 2020年7月20日
Published Date 2020/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202186
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神経症性障害の疾患概論
1.精神病性障害の歴史的変遷
長く精神医学で用いられてきた神経症という病名は,DSM-51)やICD-112)では採用されておらず,DSM-5では不安症群(恐怖症,不安症),強迫症および関連症候群,心的外傷およびストレス因関連障害群,解離症群,身体症状症および関連症群に,ICD-11では,不安または恐怖関連症群,強迫症または関連症群,ストレス関連症群,解離症群,身体的苦痛症群または身体的体験症群(という案)に分類されている.
歴史的には,器質性疾患や内因性疾患(統合失調症や気分障害等)ではない心因性疾患が神経症とされていた.精神分析の創始者であるFreudは,「無意識の葛藤が原因となる」,「(精神病に比べて)現実検討に影響がないレベルの精神疾患」という病因論や病態水準論の視点から神経症を定義した.長くこの考えが採用されていたが,診断の信頼性を高めるために明確な基準を設定した操作診断が登場したことや,脳科学の発展で神経症のいくつかの疾患において生物学的要因の解明が進んだことで,DSM-ⅢやICD-10からは精神病と神経症という二分法は用いられなくなった.それでも,ICD-10等では神経症性障害という病名は採用されていたが,DSM-5およびICD-11では神経症という分類は用いられなくなった.
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