わたしの大切な作業・第12回
食べること一般に関する作業
細谷 亮太
pp.321
発行日 2019年4月15日
Published Date 2019/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201649
- 有料閲覧
- 文献概要
私がおよそ作業といえるようなものを一切していないことに、この原稿を引き受けてから気づいた。家事という家での大切な作業のうち掃除、洗濯、皿洗いのどれもやらない。蛍光灯がだめになった時には、踏み台に乗って新しいものと交換したりはするものの、それも仕方がないからシブシブの体でなんとかやり終える。小さな庭に草が生えるとカミサンが、草むしりをするようにうるさく言ってくるが、それもやらない。好きではないのだ。そのうちに見かねて彼女がきれいに片づけるのを私はよく知っている。
そんな私だが唯一、彼女に「本当に忠実だわね」と感心されるのは「食べること一般」に関する働きである。何かが食べたいということになれば、材料を買いに行くところからマメマメしく動く。すき焼が食べたくなったとしよう。
Copyright © 2019, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.