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Key Questions
Q1:医療観察制度におけるリスクアセスメントとは?
Q2:精神障害者のリスクアセスメントとは?
Q3:リスクアセスメントに基づいたストレングスアプローチとは?
はじめに
精神障害ゆえに自傷や他害行為に至る場合がある.そのようなリスクのある対象者に対する的確なアセスメントは,精神医療に携わるすべての専門職に求められるものだが,現在,あらためてその必要性と重要性が高まっている.
2018年(平成30年)3月27日に,法改正も含めたさまざまな議論を経て,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下,精神保健福祉法)に規定される「措置入院の運用に関するガイドライン」が見直された.この指針を受けて,いくつかの地方自治体では,措置入院患者本人の同意を得て退院後の支援計画を立案し,多機関と連携しながら継続的に地域生活の定着を支援する取り組みを開始している.こうした動きにおいて重要なのは,いうまでもなく,措置入院に至った精神障害の悪化のリスク要因やそのプロセスを入院中に的確にアセスメントしておくことである.
その一方で,「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下,医療観察法)は,施行されて13年が経過した.社会復帰を促進することを目的とした医療観察制度では,2017年(平成29年)末までに4,562件の検察官による審判申立てがなされ,地方裁判所の入院決定により,3,073件の入院処遇が開始され,その件数も含めた2,485人の地域社会における処遇(通院処遇)が開始されている.そして,1,818人が医療観察制度の処遇を終了し,一般の精神医療および精神保健福祉へ移行している1).これは,心身喪失等の状態で重大な他害行為に至った医療観察対象者に対するリスクアセスメントとその継続的な支援の取り組みが,一般の精神医療や精神保健福祉に引き継がれていることを意味している.
本稿では,医療観察制度におけるリスクアセスメントを紹介しながら,一般の精神医療を利用する事例に対する自傷・他害のリスクアセスメントとその具体的な介入方法も含めた技術的な解説を行ってみたい.
本稿中の意見にかかわる部分はあくまで筆者らの私見ではあるが,精神障害ゆえの自傷や他害行為をより的確にアセスメントするうえでの参考になれば幸いである.
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