Japanese
English
研究と報告
自傷および他害などの問題行動に炭酸リチウムが有効であった重度精神遅滞の2症例
Two Cases of Mental Retardation which Lithium Carbonate was Effective for Self-injury and Aggressivity
西村 浩
1
,
忽滑谷 和孝
1
,
篠崎 徹
1
,
笠原 洋勇
1
,
牛島 定信
2
Hiroshi Nishimura
1
,
Kazutaka Nukariya
1
,
Tooru Shinozaki
1
,
Hiroo Kasahara
1
,
Sadanobu Ushijima
2
1東京慈恵会医科大学柏病院精神神経科
2東京慈恵会医科大学精神医学教室
1Department of Psychiatry and Neurology, The Jikei University School of Medicine Kashiwa Hospital
2Department of Psychiatry and Neurology, The Jikei University School of Medicine
キーワード:
Lithium therapy
,
Mental retardation
,
Aggressivity
,
Selfinjury
Keyword:
Lithium therapy
,
Mental retardation
,
Aggressivity
,
Selfinjury
pp.725-732
発行日 1992年7月15日
Published Date 1992/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903273
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【抄録】 気分障害を伴わず,自傷および他害などの問題行動に対しlithium carbonateが有効であった重度精神遅滞の2症例を報告するとともに若干の文献的考察を加えた。第1例では問題行動の減少,日常生活能力に対する指導上の困難さの軽減,歯科治療に伴う困難さの軽減および意味不明ながら発語の増加などの改善を認めた。これらの改善に伴って,家族側の自宅外泊に対する態度も協力的になるなど副次的効果も得られた。第2例では衝動性が軽減して他患とのトラブルがなくなり,診察にも応じるようになり医療保護入院から任意入院に切り替えることができた。また家族との外出時のトラブルもなくなったため,入院26年目に初の自宅外泊が可能となった。また日常生活能力に対する指導にも応じるようになり,簡単な挨拶などの発語も認められるようになった。我が国では精神遅滞に対しlithium carbonateを投与した報告例は少なく,不明な点が多い領域であり,その効果および作用機序などについてもまだ結論を得るに至っておらず,今後このような報告を集積してゆく必要があると考える。
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