増刊号 発達障害の作業療法
第2章 発達障害の支援と作業療法—幼児期から青年期・成人まで
8 発達障害のある大学生への支援
加藤 芙美
1
Fumi Kato
1
1長崎大学障がい学生支援室
pp.778-783
発行日 2018年7月20日
Published Date 2018/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201377
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
高等教育機関における発達障害のある学生の在籍数
独立行政法人日本学生支援機構の「大学,短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」1)によると,2006年(平成18年)には4,937人であった障害学生数は,2016年(平成28年)には2万7,257人となった.その中でも特に発達障害のある学生数(診断書有)は,2006年の127人から,2016年には4,150人となり,著しい増加傾向にある.この増加の背景には,2004年(平成16年)に成立した「発達障害者支援法」等により,社会的な認識が向上したこと,メディア等で取り上げられる機会が増えたこと,発達障害を診断できる医療機関が増えたこと,教育場面において発達障害分野での取り組みが重視されるようになってきたこと等が挙げられるだろう.
しかしながら,文部科学省が2012年(平成24年)に実施した調査2)では,公立の小・中学校の通常の学級に在籍する児童生徒に占める「学習面又は行動面で著しい困難を示す」児童生徒は約6.5%という結果が示されており,診断書の有無を別としても,推測される数よりはかなり少ない.このことからは,現時点では本人も周囲の人も発達障害とは認識せずに学生生活を送っている学生の存在が容易に推測される.なお,2016年度実態調査1)の発達障害のある学生数の内訳としては,自閉スペクトラム症(ASD)2,634人(63.5%),注意欠如・多動症(ADHD)809人(19.5%),限局性学習症(SLD)169人(4.1%),発達障害の重複538人(13.0%)である.
Copyright © 2018, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.