連載 かれんと
大学生と幼児の間
森下 直貴
1
1浜松医科大学
pp.439
発行日 1996年7月10日
Published Date 1996/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900506
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大学にはゼミナールという形態の授業がある.大教室での教師による一方的な講義に対して,学生自身が研究し発表する少人数の授業をさす.欠席・居眠り・私語・飲食・雑誌回覧など,学生が示すふるまいに危機感をもつにいたった大学・教師側が,カリキュラム改革の決定打として掲げたのが,このゼミナールの充実にほかならない.しかし,である.
1人の学生に特定の文献を指定し,次回までにレジュメにして報告するよう求めたとする.常識から考えると,その学生は徹夜をしてでもノルマを達成するだろうし,権威や教師にいろいろと批判的な疑問をぶつけてくるに違いない.私たちが学生の頃は少なくともそうだった(ように思う).しかし今の学生はかなり違う.ひどい例だと何の連絡もないまま欠席する.「図書館のコンピュータで探したけれど,うまく見つかりませんでした」と報告してくるのは,まだましな方である(小学生でも操作できるんだが).「検索すると大学には2冊あり,自分の学部のは貸し出し中でした」とすましている学生もいる.「で,そちらには行ってみたの?」「いいえ,入ったことがありませんでしたから」とくる.教師が少しでも詰問調になろうものなら,「好きで大学に来ているわけじゃないんです.親が行けというから……」(じゃ,どこに行きたいんだ?!)
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