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Key Questions
Q1:高齢運転者の事故リスクはどれくらいか?
Q2:海外の運転免許制度に事故削減効果はあるか?
Q3:今後の高齢運転者対策はどうあるべきか?
はじめに
運転免許をおもちの方は,免許を取ったときの喜びを覚えているだろうか.あの喜びを覚えている人も,そんな昔のことは忘れてしまったと苦笑いする人も,免許を取った後に忘れてならないのが免許の更新である.最初の更新は免許取得から3年後,その後は軽微な違反が1回までであれば,5年に1度の頻度で免許を更新する.更新の際には運転者の区分(優良運転者,一般運転者,違反運転者,初回更新者)に応じた講習を受ける.そして,70歳以降は更新頻度が3年に1度となり,高齢者講習を受ける.75歳以降は認知機能検査も受ける.私たちは免許の更新や更新時の講習を,たとえ面倒だと思っていても当然のこととして受け入れている.しかし,世界には免許の更新が必要ない国もあると知れば,免許の更新や更新時の講習に意味があるのか,ふと疑問に思う.
世界の運転免許制度は多種多様である.日本では多くの場合,自動車教習所に通って,所定の学科教習と技能教習を受け,最後に運転免許試験場で学科試験に合格したら,免許が取れる.最短でも合宿形式で2週間はかかる.一方,あらかじめ何らかの方法で運転技能を身につけて,試験を受けるという手もある.いわゆる「一発合格」を狙うケースである.日本でこれはかなり稀である.しかし,世界を見渡せば,それが必ずしも稀でないことがわかる.そもそも,自動車教習所がなく,「一発合格」を狙うような運転免許制度しかない国もあれば,制度があってないような国もある.
運転免許制度で大切なことは,運転者に安全運転の技能と交通規則の知識が備わっているかどうか,そのことを判定する仕組みとして適切に機能しているかどうかである.免許の更新は,その判定を定期的に行う仕組みである.さて,そのような仕組みは本当に必要か.必要であれば,それはいかなるべきか.本稿では特に高齢期の免許更新について,わが国と欧米の制度を概観し,今後の高齢運転者対策のあり方について考えたい.
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