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Key Questions
Q1:自動車の運転に影響を与える医薬品とは?
Q2:運転する人が,医薬品を使用した後に注意すべき副作用とは?
Q3:医薬品を使用している人がしてはいけないこととは?
はじめに
就寝前に睡眠導入剤を服用した翌日,眠気を感じる等して交通事故を起こしたとされる事例は,近年,国内でも複数報告されている1).また,2017年5月には,米国の著名なプロゴルファーが,薬物の影響下で運転していた疑いで逮捕された.ブレーキ灯と方向指示器をつけたまま車道上に車両を停車させ,運転席で居眠りしているところを発見された.直立歩行が困難であった様子も報じられた.アルコールは検出されず,腰の手術後に処方された4種類の医薬品(オピオイド系の鎮痛剤等)により,予期せぬ影響が出たとの供述が報じられた2).
これらは,医薬品を使用中の人による自動車運転の実態の一端を示しているが,医薬品を使っていたために交通事故を含めた危険な事態に陥らないよう,予防できることが望ましい.本稿は,処方薬あるいは薬局で購入できるOTC(over-the-counter)医薬品が,自動車運転に及ぼし得る影響について,最近の研究知見を紹介する.日本では,医薬品を含む薬物の影響下での自動車運転の研究は少なく,実態も把握されていないが,海外では,1990年代以降,アルコール以外の薬物が自動車運転に及ぼす影響の研究が進み,知見が蓄積されている3).
日本の一般人口における過去3カ月間の抗うつ薬,睡眠薬,抗不安薬の処方率は,2009年(平成21年)の調査でそれぞれ3%,5%,5%と推計されている4).この数値は,米国5),欧州や台湾4)における向精神薬の処方率と同程度とみられる.1990年代と比較して,抗うつ薬を含む向精神薬の処方率は増える傾向にあるが,これも欧米と同様の傾向である.また,1種類の向精神薬ではなく,複数の向精神薬を処方されることもある.さらに,風邪薬や鼻炎薬,あるいは高血圧症等の生活習慣病の治療薬と向精神薬を同時に使用している人も多いと考えられる.こうした場合に注意すべき点についても触れる.
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