増刊号 上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
第3章 疾患別 上肢・手の困難事例へのアプローチ—具体的介入例とポイント
7 五十肩の上肢機能
有泉 宏紀
1
Hiroki Ariizumi
1
1木下整形外科クリニック
pp.778-782
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201003
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五十肩の知っておきべき知識
五十肩は中高年から,明確な誘因もなく肩の痛みが出現する疾患である.「動かしてもいないのに痛い」,「肩を上げることができない」とさまざまな訴えがある.一般的には50代を中心とした中年期以降に肩関節周囲組織の退行変性を認め,肩関節の痛みと運動障害を認めると定義されている.
病態としては関節包周囲に慢性炎症が起こり,疼痛と周囲組織が癒着し,肩甲上腕関節の運動制限をきたす.肩関節周囲炎ともいわれる.疼痛は寒冷時や夜間に増強し,前腕,手,頸部痛も認める.外旋制限により結髪動作に支障をきたし,また内旋制限により結帯動作が困難となる.自動運動のみならず,他動運動でも制限されるのが特徴である.肩甲帯周囲筋は廃用性萎縮に陥りやすく,関節造影では関節裂隙,特に腋窩陥凹の縮小を認める.治療としては鎮痛剤の投与と運動療法が主となる.経過の長い場合は,観血的に癒着剝離術も行われる.また他の疾患との鑑別も必要である.腱板断裂や石灰沈着性腱板炎,変形性肩関節症等,MRI,単純X線画像,超音波検査等の画像診断からの鑑別も必要である(図1).
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