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用語としての生活行為
「生活行為」という語が,いつごろからどのような文脈で使われるようになったのかは,実はよくわかっていない.論文書誌データベース「CiNii Articles」(http://ci.nii.ac.jp/)で,2016年(平成28年)2月14日に,“生活行為”をキーワードとして検索したところ,古くは1958年(昭和33年)の松下による「生活行為の平面的範疇について」1)という論文がヒットした.遅くともこの時代には,家政もしくは建築の文脈で使用されていた語のようである.たとえば1967年(昭和42年)に高橋は,日本建築学会において,「リハビリテーション施設の研究:その2:在院脊損者の日常生活行為について(建築計画)」2)というタイトルで,病棟の環境整備の観点から移動や排泄の自立度を検討している.
リハビリテーション医学の文脈ではどうであろうか? 同様に検索したところ,1981年(昭和56年)に奥村が『臨床理学療法』(理学療法学の前継誌)に報告した「片麻痺歩行自立群の機能と生活行為—通所と在宅を比較して」3)という論文が見いだされた.この中で奥村は,PTに対して,「目的意識のある社会生活を送る中にこそ,患者の自立ある生活が存在する事を認識すべきである」と語りかけている.リハビリテーション医学の文脈で生活行為という用語の広がりに貢献した論献として,上田の1984年(昭和59年)の論文「ADLからQOLへ—リハビリテーションにおける目標の転換」4)は無視できない.上田はこの中で,ADLを日常生活行為と訳し,「従来は日常生活動作と訳されてきたが,コミュニケーション等必ずしも動作と云うには適さないものも含むので,行為(目的をもった行動)とした」と記述している.
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