増刊号 認知症と作業療法
第1章 認知症とは
12 —認知症の診断と治療⑧—精神疾患等,その他の疾患・症状との鑑別
上野 秀樹
1,2,3
Hideki Ueno
1,2,3
1敦賀温泉病院
2社会福祉法人ロザリオの聖母会 海上寮療養所
3千葉大学医学部附属病院
pp.616-620
発行日 2015年6月20日
Published Date 2015/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200264
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はじめに
人口の高齢化に伴い,認知症の人が増加している.認知症では,認知機能障害と行動・心理症状と呼ばれる精神症状が出現する可能性があることが知られている.本稿では,認知症に伴う行動・心理症状を含む高齢者の精神症状のみたてに関して説明する.
高齢者の精神症状は,
1)せん妄状態
2)もともとの精神障害,たとえばアルコール関連障害,妄想性障害,感情障害,薬剤性精神病
3)認知症に伴う行動・心理症状
に分類することができる.
これらの精神症状は対応方法が異なるため,きちんと見極めて対応することが重要となる.最初に検討すべきは,意識障害を背景にしたせん妄状態である.これは意識障害の原因となっている主に身体的な問題が解決できれば改善が期待できるからである.そして,その後にもともとの精神障害に関して検討を行う.これは,精神科的対応,すなわち精神科薬物療法が治療の第一選択となる可能性があるからである.最後に認知症に伴う行動・心理症状を検討することになる.
認知症に伴う行動・心理症状とは,認知機能が低下した人が周囲の環境で混乱したり,また,言葉にするのが苦手な認知症の人の言葉にならないメッセージの可能性がある精神症状である.認知症に伴う行動・心理症状の対応では,認知症の人が混乱しないような環境の調整や,一見理解しがたい認知症の人の言動に込められたメッセージを適切に読み取ることが重要になる.
以下,①せん妄状態,②もともとの精神障害,③認知症に伴う行動・心理症状の順に,ケースを紹介しつつ概観する.
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