連載 手術・手技シリーズ
⑧嚢胞性疾患の硬化療法
深瀬 滋
1
1山形県立中央病院耳鼻咽喉科
pp.638-643
発行日 2001年8月20日
Published Date 2001/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902414
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はじめに
OK−432(ピシバニール®)はA群溶連菌Su株をペニシリンで不活化した製剤で,癌の免疫療法剤として開発されたものである。局所に強い炎症を引き起こし,種々のサイトカインを誘導することにより免疫増強作用を現すとされている。本剤を癌性胸膜炎・腹膜炎などの際に胸腔や腹腔内に注入すると,腔内の癒着を促し胸水や腹水の貯留に対して非常に有効であることは広く認められている。一方,小児に主に認められる嚢胞状リンパ管腫は嚢胞壁が極めて薄いため全摘出が難しく,結果として術後再発をきたしやすい疾患である。嚢胞状リンパ管腫に対しては,ブレオマイシンを用いた硬化療法が歴史的に試みられてきたが,安全性・確実性は満足できるものではなかった。1987年,荻田らはOK−432を嚢胞内に注入する治療法を発表した1〜4)。本療法は効果が確実でしかも安全であるため,現在本疾患の第1選択の治療法となり5),1995年にはリンパ管腫治療剤として保険適用にもなっている。われわれは,1991年に本療法をガマ腫に応用して以来,40例を越える頭頸部の嚢胞性疾患に対し本治療を行ってきたが,ガマ腫,耳血腫,舌嚢胞,正中頸嚢胞などでは極めて有用で,手術に代わり得る治療法と考えている6〜9)。われわれの行っている「OK−432嚢胞内注入療法」の実際につき,治療後の経過観察のポイントおよび作用機序の考察を含めて述べる。また,甲状腺嚢胞や側頸嚢胞などに対してエタノール注入療法も報告されているが10),それに関しても簡単に紹介する。
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