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書評 —潮見泰藏(監),今井 樹(著)—「脳卒中後の運動機能回復レビュー—PT・OTが知っておきたい基礎知識」
佐野 恭子
1
1兵庫医療大学
pp.348
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200191
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冒頭の「監修のことば」にある通り,近年,中枢神経の可塑的変化や神経ネットワークの再構築による回復の可能性がよりいっそう明らかになったことで,脳卒中リハは治療としての新たな時代を迎えていると思われる.本書は,PTである今井 樹氏が,長きにわたる研鑽を経て得た知見のごく一部を文献レビューのかたちでまとめられたものである.PT・OT養成校の学生はもちろん,科学論文に接する機会の少ない初学者にも理解しやすい平易な文章で書かれているが,脳卒中リハに携わる以上は知っておくべき基本的かつ重要な情報が含まれているので,職種や経験を問わず手に取っていただきたい.
第1章「基礎および臨床研究の成果を臨床の場面へ」では,各治療アプローチ法を獲得するにはその背景(メカニズム)の理解が必須であること,基礎研究と臨床研究は補完関係にあり,両者の知恵の結集こそが根拠ある治療の提供とリハ“学”の構築につながることが述べられている.短い章ながら,経験則に流れず新しい知見を積極的に吸収する姿勢が治療者の責任であり武器であることを,読者は再認識させられるであろう.そのような著者の知的好奇心は,最終章(第8章「視点を広げてくれる臨床研究」)でもとどまることなく反映されており,日常生活や自主訓練の指導を別の視点でとらえる機会を与えてくれる.
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