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理学療法士が業務を通じて出会う患者さんの最も多い疾患の1つに,「脳卒中」があります.日本における脳卒中に対する理学療法は,多くの先達の実践の積み重ねから日々発展を続けています.このたび,文光堂から潮見泰藏氏により編集された『脳卒中に対する標準的理学療法介入』が出版されました.編者である潮見泰藏氏は,長年にわたり中枢神経系疾患の理学療法を実践され,また神経系専門理学療法士として,とりわけ脳卒中の理学療法に取り組まれているリーダーのお一人であります.
本書では,脳卒中患者に対する理学療法の考え方を再考し,新たな脳卒中理学療法の方向性はどうあるべきかに関して整然と,また系統的に著しています.1990年代以降における脳科学関連の進歩をベースに置き,それらの知見から理学療法をどのように展開していけばよいかを考えさせてくれます.基礎編においては,理学療法の新しいパラダイムを提示し,運動学習に基づく課題指向型アプローチの重要性について詳述しています.脳卒中の標準的治療内容,機能回復のメカニズム,学習における環境の重要性,帰結評価としての臨床評価指標,など,標準的な介入方法に関するものです.基礎編に続く実践編では,臨床経験の豊富な方々の著述により,臨床場面での具体的な理学療法の展開方法について,急性期から回復期に生じてくる,誰もが対応に苦慮する具体的な問題点に対して標準的な答えを用意しています.半側無視,装具の選択,バランス機能,上肢や体幹機能,起居動作や歩行の獲得,また,退院後の生活機能をいかにして高め,また良い状態を維持し,QOL向上のためにはどうすれば良いかまで,必要かつ十分な内容が網羅されています.各項目ともBasic Standardの部分に,内容のエキスを示し,本文もとてもわかりやすい簡潔な記載で統一され,しかもSumming upの部分でポイントが明示されているため,とても理解しやすくなっています.
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