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書評 —田中順子(編著)—「臨床が変わる! イラストでわかる 目からウロコの音楽活動」
岩﨑 清隆
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1特定非営利活動法人「ぷねうま群馬」
pp.246
発行日 2015年3月15日
Published Date 2015/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200164
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「死ぬということは,もうモーツァルトが聴けなくなることだ」と言った人がいたそうだ.真偽のほどはわからないが,アインシュタインの言葉だそうだ〔吉田秀和,他(編);モーツァルト頌.白水社,1995〕.いずれにしてもモーツァルトを楽しまなければ,人にあらず,生きる価値もなしといわんばかりの,すさまじいモーツァルトへの傾倒振りである.音楽がそれほどまでに人の生を充実させるものならば,それを日々の日常の中で使わない法はないということにもなる.実際,仕事における精神の高揚を,音楽に求める人の話をよく聞く.故黒澤 明監督は,朝から晩まで武満 徹の「ノヴェンバー・ステップス」をかけながら,あの「生きものの記録」の構想を練ったそうである(野上照代:蜥蜴の尻っぽ—とっておき映画の話.文藝春秋).百田尚樹は涙をボロボロ流しマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲」を繰り返し聴きながら,『永遠の0』の最終章を脱稿したらしい(百田尚樹:至高の音楽 クラシック 永遠の名曲.PHP研究所).そうなれば当然,病者や高齢者,障害のある人の症状や機能不全の改善を求めて,音楽を使ってみようという人が出てきても不思議はない.これが治療行為としての音楽療法の原点といってもよかろう.
本書の編著者はOTであるが,本書はその音楽療法への格好の入門書といえる.
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