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今回,韓国のPTであるHong氏による,正常発達の質的評価を脳性まひ児治療へ応用するヒントを満載した『正常発達 第2版—脳性まひの治療アイディア』が翻訳された.GMFCS(粗大運動能力分類システム)に沿った運動の質的評価システム等,Hong氏ならではの新しい提案を盛り込んだ待望の書である.Hong氏は,英国でボバースコースを受講され,その後韓国での脳性まひ児治療を発展させた優秀な先駆的セラピストであるとともに,アジア全域に脳性まひ児治療を拡大し続ける壮大なスケールのPTである.ABPIA(アジア小児ボバース講習会講師会議)の場でお会いするたびに,力強い臨床活動ならびに,講習会の展開が紹介される.その圧倒的な指導力と行動力で現在は,フィリピンでの臨床活動や講習会運営に尽力されており,繊細かつ大胆な治療,目に見える成果,説得力のある臨床推論,独自の治療アイディア,人の輪の広がりを確実に実現されている.
日本に脳性まひ児の早期治療の考え方が導入されてすでに40年以上になる.成長していく子どもたちと共に新たな課題に立ち向かってきたが,時にはその障害の困難さに,私たち自身がくじけそうになる.今回,付録としてGMFCSに沿って質的評価を記載できるように工夫された評価表が添付されている.GMFCSが3より重度な脳性まひ児は特に,その機能の維持さえも難しく,年齢を重ねた成人には二次障害のリスクも強くなる.それらを予防するためには,年齢やライフステージに沿った治療展開,母親や家族,学校や地域の支援者を巻き込んだ療育環境の整備も不可欠である.継続的な治療で子どもの生活や人生を支えるために,実は,出生時からの,あるいは胎生期からの,子どもの発達のスタート時期の分析が重要で,そこから治療アイディアが創造される.基本は忘れず,かつ,年齢や状況に応じて応用を利かせ,子どもたちの要請に応えるために,多くの実際的なアイディアが必要となる.
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