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書評 —Michael K. Iwama(著),松原麻子,清水 一,宮口英樹(訳)—「川モデル—文化に適した作業療法」
澤田 辰則
1
,
友利 幸之介
2
1イムス板橋リハビリテーション病院
2神奈川県立保健福祉大学大学院
pp.1240
発行日 2014年11月15日
Published Date 2014/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200053
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作業療法の理論に興味をもつOTは,Michael K. Iwama氏の川モデルについて一度は耳にしたことがあるであろう.しかし,その内容については実はあまり知られていないのではないだろうか? 日本の文化に根ざした川モデルであったが,矛盾することに日本語で詳しく説明されている成書がなかった.逆輸入という言葉が適切かわからないが,ようやく川モデルを日本語で学ぶことができるようにした本書の意義は大きい.
さて,爽やかな日本の清流を連想させる装丁の本書は,川モデルの説明だけでなく,川モデルと従来の作業療法理論との差異について,鋭い考察がなされており,非常に読み応えがあった.たとえば,個人主義である西洋文化では自己と環境を2つの別個の存在だとしており(p25),自己と環境の橋渡しとして作業が存在する.しかし,日本を含む東洋の文化は集産主義であり,自己と環境等複数の要素が一つの切り離すことができない統一体に組み込まれている.環境は支配できるものでなく,共に存在するものであり,それゆえに2つ以上の部分を橋渡しするための特別な努力は命じられも要求されもしない(p39),と述べられている.さらに,個人が環境を支配するという考え方である西洋の人間作業モデル(MOHO)やカナダ作業モデル(CMOP)は,日本をはじめとした集産主義の文化で利用することは困難だと述べている.
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