連載 買いたい新書
—清水義範著—清水義範の作文教室
横井 郁子
1
1日本大学大学院理工学研究科
pp.1090-1091
発行日 1998年11月1日
Published Date 1998/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905717
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「遺伝子に合わせて指導する」—小学生から学ぶ
この本は小説家・清水義範さんが作文を指導する,題名通りの本です.小学生対象のこの作文教室は,清水さんの弟さんが名古屋で開いているものです.子供たちの作文が,東京在住の清水さんのところにFAXで送られてきます.それを1つひとつ添削して,再びFAXで弟さんのところへ送り返します.この作文教室の1年間をまとめたのがこの本で,6人の小学生の作文がどのように変化していくか,月ごとに清水さんの思いや教育に対する意見などをはさみながらのドキュメントです.
子供たちの作文は上手下手に関係なく,知らぬうちに読む者を優しい気持ちにしてくれます.自分が小学生の頃を思い出し,ほのぼのしてきます.清水さんはテーマをできるだけ決めず,先生の顔色など気にせず「何でも書いていいんだよ」というメッセージを送り続けます.それに対して子供たちは,家族や学校のさまざまな出来事を書いてきます.小学生にとっての家族,学校の存在の大きさがよくわかります.彼ら,彼女らにとってはそこが世界のすべてなのでしょう.私にとっても確かにそうでした.夏休みの間預かっていたクラスのカタツムリを,夏休み最終日に踏んでしまったとき,私の人生はもう終わりだと泣いたことを,私は思い出しました.
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