書評
―Michael Gelder,Richard Mayou,John Geddes 著,山内俊雄 監訳,丸山 敬 訳―オックスフォード・精神医学
西園 昌久
1
1心理社会的精神医学研究所
pp.878
発行日 2007年8月15日
Published Date 2007/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101050
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医学教育は精神医学教育を含めて,知識,技能,態度の3側面がどれにも偏ることなく学習されるものであらねばならないといわれる。本書は初心者から専門家まで段階別に書かれた数種のオックスフォード精神医学教科書シリーズの中で医学生,プライマリケア医などを対象にしたOxford Core Text Psychiatry Third Edition, 2005の邦訳である。3人の著者のうち筆頭のM. Gelder教授は世界精神医学会(WPA)と世界医学教育連盟(WFME)が,合同で,世界各国の精神医学教育についてカリキュラムを明示して勧告した報告書(1997)をとりまとめた会議の責任者であった。評者も委員として会議に加わった経験があるので,いっそう,この翻訳書には興味をそそられた。
まず冒頭の第1章,第2章で,先述した知識,技能,態度の3つの目標が具体的にどのように記載されるか見てみよう。第1章は「徴候,症状,診断」であるが,必要な症状の記載説明にとどまっていない。「診察と診断は患者理解の一部に過ぎない。診察も診断も各患者を唯一無二の人間であると理解することに,裏打ちされていなければならない。これは本からだけでは学べない。患者の訴えに真摯に耳を傾けて初めて学ぶことができるものである」と態度のかけがえのないことを明記している。第2章の「評価」の情報収集の項目の中で,面接場面での患者の椅子の取り方,医師の座る位置という技法について述べている。あくまで,患者中心である。これが本書の第1の特徴。
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