増刊号 脳卒中の作業療法―支援技術から他職種連携・制度の利用まで
第2章 支援技術Ⅰ 急性期から回復期の基礎
5 基本動作の支援 ⑥利き手交換―練習方法の提案
杉山 智久
1
,
澤 俊二
1
,
冨田 昌夫
1
Tomohisa Sugiyama
1
,
Shunji Sawa
1
,
Masao Tomita
1
1藤田保健衛生大学
pp.639-643
発行日 2014年6月20日
Published Date 2014/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100552
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はじめに
脳血管障害に伴い,利き手が麻痺した場合,片麻痺者の多くは麻痺の回復,利き手としての能力回復を希望される.われわれも含め,多くのOTはそうしたニーズに応えながらも,新たな生活を切り拓く代償的手段として,利き手交換練習を実施してきた.利き手交換練習は,発達過程で分化してきた利き手の能力と同等の能力を,非利き手でも獲得することを目指す練習である.主には,箸操作,書字の練習等,巧緻性を要する活動を中心に実施していた.多くの療法士が,効果的な練習方法を確立するため,運動学習的概念より難易度の段階づけ,筋疲労の影響の確認,箸や鉛筆の先からの知覚探索活動を取り入れる,箸や鉛筆の把持形態と操作性との関連性等を研究してきた.
近年,従来の箸や書字に偏った利き手交換練習に疑問が出され,歯磨き動作の利き手交換練習等が行われるようになっている.また西久保ら1)は巧緻性の前に上肢全体の協調活動に着目し,洗い桶拭き取り活動を提案している.
今回,対象者となる片麻痺者が抱えている問題をとらえ直し,過去の研究データやわれわれが実践している臨床内容等も交えて,利き手交換練習の一つの方向性を提示したいと思う.
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