タジキスタン共和国でのNGO駐在員の経験から

はじめに

　皆さん，タジキスタン共和国という国を知っていますか？　アフガニスタン，中国，キルギスタン，ウズベキスタンと国境を接する中央アジアにある小さな国です．タジキスタンは旧ソビエト連邦の国ですが，1991年のソビエト連邦崩壊後，他のCIS（Commonwealth of Independent States）諸国は次々に独立しました．その中で，タジキスタンは唯一内戦が起こった国です．1992年から始まった内戦は5年後の1997年に収束しましたが，国外への人材流出，ガバナンス機能の著しい低下による経済や社会保障制度の疲弊といった傷跡を残しました．現在でもタジキスタンは旧CIS国の中で最貧国ですが，国内の特に農村部に貧困で苦しむ人々が多く居住しているといわれています．その中でも障がい者は，不十分な社会保障制度や教育や医療，就労の制限といった多くの困難に直面している，「社会的弱者の中の弱者」ともいうべき存在となっています．

　私はタジキスタンで2012年12月からNGOの海外駐在員として勤務しています．私の所属する「難民を助ける会」は1979年に設立された国際NGOです．現在，タジキスタンを含め，15の国と地域で活動をしていますが，タジキスタンでは2001年から活動を開始しました．当初はアフガニスタンからの難民への支援を行っていましたが，さまざまなニーズの変化に伴い，現在は障がい者支援を主とした活動を実施しています．難民を助ける会以外にも日本に本部を置く国際NGOはありますが，主な活動の中に「障がい者支援」を掲げている団体はあまり多くありません．難民を助ける会は国内でも東日本大震災の被災地での障がい者支援を行っていますが，その被災地支援をお手伝いしたことをきっかけに，海外駐在員としてのキャリアをスタートすることになりました．