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Key Questions
1.論文の批判的吟味とは?
2.臨床に役立つ論文の読み方とは?
3.論文をどのように臨床に活かすのか?
はじめに
研究論文を読む必要性や基本的な論文の読み方については,これまでの4カ月にわたる本講座で述べられている.そこで,今回は「私の研究論文の読み方」と題して,私自身の経験をもとに,研究論文の読み方や臨床・研究での活かし方について話を進めたいと思う.
まず,「研究とは何か?」ということを確認したい.秋1)は「研究とは,興味・関心の対象となる事象をもとに,より一般的な結論を導く過程である」と述べている.研究は,自分が興味・関心をもった事柄について調べ,皆が納得できるような答えを得ることである.私たち臨床家は,研究から得られた結果(皆が納得できるような答え)を用いて,根拠のある臨床を行うこと,いわゆる,根拠に基づく実践(evidence based practice:EBP)を求められるわけである.米国作業療法協会では,EBPが健康問題に対して有効な手段であると主張しはじめて,すでに20年を超えており,1998年(平成10年)からEBPプロジェクトを実施している2).そして,私たちが実際に論文を読み,臨床に反映させる際には,Ⅰ~Ⅴ段階の根拠の水準(levels of evidence)を参考にすることが多い.しかし,根拠の水準が低いからといって,役に立たないわけではないし,根拠の水準が高いからといって,必ずしも役に立つとはかぎらない.Sackettら3)は,根拠に基づく医療は,料理本のような医療ではなく,最適な外部の根拠と個人の臨床知識,患者の選択を統合させたアプローチであるとし,独創性のない単一的なアプローチではないと述べている.このことからも,根拠の水準だけにこだわるのではなく,目の前のクライエントに対して,どのようにアプローチを行えば効果を上げることができるのかという視点で,批判的吟味を行いながら論文を読む必要があると考えられる.つまり,自分のクライエントに関係する論文を効率よく読み,臨床に活かすことが最も重要なのである.このことを踏まえたうえで,今回は,大学院で学んだ研究論文の読み方や,私自身が臨床でどのように研究論文を読み,活用しているかを紹介することにする.
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