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私的なことになってしまうが,私の父は扁平上皮がん,母は悪性リンパ腫であった.化学療法と外科的治療が行われ,両親とも羅患後5年で亡くなったように記憶している.また,10年間の教官生活の間に,教え子を喉頭がんで見送ったこともある.K君は27歳の入学で,社会経験もあり,思慮深く,いつもクラスを引っ張ってくれていた.卒業後3年目ごろ,入院したと報告を受け,東京出張の帰りに,名古屋の病院に立ち寄り,見舞いの品物を買い,病院の食堂の隅で話し合ったときの彼の戸惑った表情と「アグレッシブになる自分をコントロールできない」,「そんな自分を作業療法は救ってくれない」と,ほとんど出ない声で,切々と言っていたのを昨日のことのように思い出す.このように,がんと緩和ケアについては,身近な,誰もが直面する課題だと思う.
さて,本書は2006年,英国のJill Cooper氏によりまとめられた書籍の訳本である.13の章から成り,「第1章 がんとは何か?」,「第2章 がんや緩和ケア領域において作業療法士が直面する課題」,「第3章 症状コントロールのための作業療法アプローチ」,「第4章 不安のマネジメントとリラクセーションにおける作業療法」,「第5章 呼吸困難のマネジメントにおける作業療法」,「第6章 がんに伴う倦怠感と作業療法」,「第7章 クライエント中心の作業療法アプローチ―ケーススタディ」,「第8章 小児がんと緩和ケアにおける作業療法」,「第9章HIV関連がんと緩和ケアにおける作業療法」,「第10章 神経腫瘍における作業療法」,「第11章 ホスピスとデイケアにおける作業療法」,「第12章 精神力学的活動としての創作活動の利用」,「第13章 がんと緩和ケアにおける作業療法のアウトカム評価」,「付録」,「用語解説」,「略語」,「索引」から構成されている.
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