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Key Questions
Q1:ASD児・者にみられる感覚情報処理過程の障害とは?
Q2:ASD児・者の困難さと感覚情報処理過程の障害との関連性は?
Q3:感覚情報処理過程に関連する脳機能とは?
はじめに
自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorders:ASD)にみられる感覚処理障害(sensory processing disorder:SPD)は,米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-Ⅳ)等の診断基準には含まれていないものの,ASD児・者の発達や学習,そして生活や社会参加を考えるうえで医療や教育,福祉の分野で広く注目がなされてきた.2013年(平成25年)5月に改定予定であるDSM-5の草案では,本質的なASDの特徴ではないものの,“unusual sensory behaviors”として感覚情報処理過程に関連した項目が挙げられており,その診断的な意義も認められてきているといえる.
SPDの原因や機序については明らかになっていない点が多いが,綾屋1)やGrandin2)等ASD当事者による報告からも,OTが彼らの生活上の困り感の背景を探り,支援や治療の実践を行っていくうえで,SPDは重要な観点の一つであると考える.
SPDに関して最初に仮説を提唱したのは,Ayres3)である.Ayresは,環境に不適応を起こしている子どもの活動制限の背景にある問題に着目し,脳科学的な視点から研究を重ね,感覚統合理論を打ち立ててきた.近年では,SPDとASD児・者の注意や覚醒,情動,行動,学習,社会性等,さまざまな領域との関連性について検証がなされてきている.文献データベースである「Scopus」では,2000年(平成12年)以降,「ASD」と「sensory」に関する論文数が急激に増加しており,2013年3月現在では,1,053本の論文にアクセスすることが可能となっている.
本稿では,近年(2000年以降)報告されている研究論文を中心に,ASD児・者におけるSPDに関する文献レビューを行うことで,根拠に基づく作業療法の一助としたい.
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