特集 OTの臨床実践に役立つ理論と技術―概念から各種応用まで
第7章:さまざまな疾患に適用となるもの
5.作業療法としてのダンス
橋本 弘子
1
1藍野大学
pp.827-832
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100202
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はじめに
ダンスの起源は人のコミュニケーション手段であり,時代を超えてさまざまな形態で存在し現代に至っている.ダンスは人のあらゆる機能を統合させ,感情や思考を表出する身体活動である.今まで,ダンスがリハとして,どの疾患や障害にどのように有効か等と考えられる機会は少なかった.しかし,脳科学分野の発展に伴い,海外では2007年(平成19年)ごろよりダンス時の脳イメージング法を用いた研究が始まり,ダンスの効果を身体機能や感情面からのみ述べるのでなく,認知機能面からも検証する研究が増えてきている.ダンサーの動きに対し「いかなる音楽にも合わせてステップできるのはなぜか」,「複雑な一連の動きをどうやって身につけるのか」等,さまざまな疑問を検証することで,私たちは簡単なステップさえ脳全体の機能を駆使して行っていることが明らかになってきた.現在では,ダンスの,バランスを保つ動きやターン,リズムに合わせる,動きを創作する,覚える,グループで動くとき等の脳内システムを,リハや福祉の分野で生かそうとする動きが始まろうとしている1).
ダンスは作業療法において,どのように使えるであろうか? 作業療法はその人が自分の身体と心と脳を使って,その人に最もふさわしい作業を営むことができるように導くことである2).ダンスはまさにその人の身体と心と脳を使う.それによって生活の質を高めることができれば,単なる「ダンスをすると楽しいよね」から脱し,作業療法の有効な手段の一つとして幅広い疾患に使えるに違いない.
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