- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
OTは国家資格を有する専門家である.専門家とは,特定の学問,事柄を専門に研究・担当し,それに精通している人である.しかもOTは医療職として位置づけられ,対象者の心身機能や生活機能に関わるわけであるから,専門的知識・理論とともにそれを具現化する技術を有していなければならない.それが,われわれが関わる対象者の利益となるのである.
知識とは,「ある事物について知っていることがら.あることについて理解すること.認識すること.厳密には独断・空想と区別される真なる認識によって得られた客観的妥当的な判断ないしは判断の体系を言う」(大辞林)とある.一方,理論とは「個々の経験・事実にある法則性を認め,その法則性のもとに統一的に組み立てた考え.また,原理的に組み立てた仮説」(大辞林),「個々の事実や認識を,ある原理・原則によって統一的に,だれにでも納得できるように説明し,しかも実践の指針となるもの」(漢語林)とある.
つまり,知識は,~について知っている,経験的に知っているという程度の広い意味での知識から,厳密な意味での知識までが含まれる.後者の知識は単なる信念あるいは思い込みとは異なり,合理的な根拠に基づくものである必要がある.なぜそう信じるのかと問われたときに合理的な根拠を示すことができるのが知識である.そして,独断や空想と区別するために妥当な手段を用いて吟味し,客観的な認識を経て生成された知識が,法則性に則って組み立てられたものが理論である.
さらに,技術とは「ものごとを巧みにしとげるわざ,技芸.自然に人為を加えて人間の生活に役立てるようにする手段,また,そのために開発された科学を実際に応用する手段」(大辞林),「理論を実際に応用する手段」(三省堂,国語辞典)とある.すなわち技術にはtechnique,art,skillという意味とtechnologyという意味がある.
これら厳密な意味での知識,理論,そして技術の成立に共通するのは,物事をよく観察し,仮説を立て,それを確かめ結論づけるという科学的思考と態度であると思う.この観点から,臨床において理論が生成される過程と,知識・理論と技術の関係を考えてみたい.
Copyright © 2013, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.