特集 OTの臨床実践に役立つ理論と技術―概念から各種応用まで
第1章:総論
2.人間作業モデル
笹田 哲
1
1神奈川県立保健福祉大学
pp.608-611
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100164
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理論の成立過程と変遷
作業とは遊び・余暇活動,日常生活活動,仕事・生産的活動の3つの活動からなり,物理的,社会文化的,時間的な文脈の中で遊び,日常生活活動,仕事を行うことである.「人間は精神と意志とによって活力を与えられた両手の使用を通して,自らの健康状態に影響を及ぼすことができる」と語ったのは,1960年代に作業行動理論を提唱したReilly1)である.この人間観は,人間は本来,作業を求めるニードがあり,作業を通して健康を保つ作業的存在であることを示している.作業は,まさに健康を保つ源であり,人間にとってなくてはならないものといえる.
人間作業モデル(model of human occupation:MOHO)は作業行動理論を引き継ぐかたちでKielhofner2)によって1980年代に提唱された.MOHOはクライエントにとって意味ある作業を見いだし,意志を働かせて作業に参加することに着目した概念的実践モデル3)である.その特徴は人間を心理社会的レベルで環境と交流するシステムとしてとらえることにある.MOHOにおいて人間は意志,習慣化,遂行能力の3つの要素からなり,絶えず環境との交流を通して,それぞれに影響を及ぼしていると考えられる4).また環境は物理的環境と社会的環境があり,空間,対象物,社会集団,作業形態から構成されるととらえられるのである.
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