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Key Questions
Q1:地域ニーズに作業療法は必要か?
Q2:一般高齢者に作業療法のできることは何か?
Q3:作業療法で地域は元気になるか?
はじめに
作業療法の基本的な目標は,対象となる人たちの健康を維持・促進することである.対象者が自らの日常生活や社会的活動に参加できるようになることは,作業療法が最も重視する成果である.OTはその目標を達成するために,対象者の参加能力を促進させ,参加を効率的かつ効果的にサポートするよう環境を整備する.
地域作業療法学1)では,これを「地域で暮らす人々が,さまざまな生活上の障害を持った場合に,生活の再構築のため本人および家族に対して助言・支援・指導を行い,彼らにとって住みやすい地域づくりをすること」としている.地域作業療法を考える場合には,“地域を対象に作業療法をする”という意味でとらえることが重要と思われる2,3).その場合に対象とするのは,疾病や障害の有無に関わらず,“地域生活に何らかの不自由が生じている人たち”ととらえると理解しやすい.地域を拠点として作業療法を行う場合も,広義的に考えれば地域作業療法であるが,作業療法の取り組む内容や効果を考えれば,あくまでも前者を中心に考えるほうがわかりやすいのではないだろうか.
地域作業療法の対象者に高齢者が含まれることはいうまでもない.高齢期は脳卒中等の疾患のほかに,老化による腰痛・膝痛等の筋骨格系の機能障害,指先の感覚低下や難聴等の感覚器系の機能障害,記銘力等の認知機能の低下により,生活にさまざまな支障が生じる時期でもある.一般に,高齢者の約4割が特別な病気がなくても生活に支障をきたすとされ,社会参加の機会が減り,IADLに次いでADLが低下し,要支援・要介護状態に陥りやすい.健常高齢者の場合には,身近な地域で社会参加やIADL等の生活行為の低下を早期に発見し対処することで,要支援・要介護状態となることを予防し,自立した生活を維持できると考えられる.地域作業療法では,このような予防的視点をもち,生活行為に関する相談支援のあり方を検討する必要性があると考える.
日本作業療法士協会では,2008年度(平成20年度)より老人保健健康増進等事業において,生活行為向上マネジメントの研究事業を継続している4).われわれは,この研究事業の一環として高齢者の生活行為の状態をとらえる「生活行為確認表」(Ver 1.0)を開発し,地域で暮らす健常高齢者を対象に不自由を感じる生活行為を調査した.また,「興味・関心チェックリスト」を用いて地域で暮らす高齢者の活動ニーズをとらえ,地域生活支援のあり方について検討した.
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