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編集後記
東原 英二
pp.232
発行日 2004年4月15日
Published Date 2004/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426900492
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本号は,特集のない投稿原稿だけで編集されている.本誌は発刊以来9年目になるが,この間の内視鏡手術の発展と拡大にしたがって会員数も順調に増え,また,投稿原稿も増加してきたので,特集号を組まずに発行する巻が増えてきたことは歓迎するべき点である.
あらためて最近の編集後記を通読してみたが,内視鏡下手術や医療を取り巻く現今の社会的状況を反映したものになっている.人間が健康で長生きをしたいという欲求が医療の基本である.この欲求は生存の欲求に基づくものであるから,根元的なものである.衣・食・住などは市場で入手できる.医療(健康や長生きを追求すること)についても同じように市場で金銭を媒介として入手するという考え方もある.日本では,医療は国民皆保険制度という市場外の枠組みで供給されている.市場主義と管理された制度の矛盾.医療は神聖で,金銭に対価を求めるべきではないとする旧来の考え方もある一方で,株式会社として経営の対象となり得るとする考えも米国を中心に拡がっている.そして,日本の管理された制度下でも市場主義の波が押し寄せており,われわれ医療従事者はその異なるシステムと考え方の狭間で苦慮することとなる.よくても使えない抗ガン剤.よくても保険で支払われない手術手技や治療法.管理された医療制度に,つぎつぎと持ち込まれる市場主義の産物(包括医療,病院評価,ガイドライン,セカンドオピニオンなど).
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