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日中に病院に来られないので,夜間に開いている救急窓口に患者が来ることについて,病院側では夜間窓口は救急患者のためだから,救急でない人は来ないでほしいと主張する.しかし,一部の患者は病気だから仕方がないし,重病かどうかわからないのだから病院に来るのは仕方がないと主張する.スーパーや商店では品物を販売し,病院は医療を販売する点では同じであるから文句をいうのはおかしい,病院は患者を断るのはおかしい,という理屈である.
しかし一部の患者の主張には,①今の医療制度に対する無理解がある.24時間コンビニなら,店員は3交代制か,少なくとも2交代制である.医師は翌日も平日勤務で休みなどない.医師が2交代制をとる勤務体制をとれば,今でも赤字の夜間救急体制は一層の赤字になる.安い医療費で救急医療が立ちゆかなくなり,救急病院が減少し,疲弊した救急医も現場から去っているのが現実である.今の医療体制の中では,本当に困っている人のために不必要な夜間診療を避けることが必要なのである.②医療は商品販売でもないし,一般のサービス産業とは異なる.患者は場合によれば生命の危機に陥っており,医療者はその立場を思いやって接しなければならない.だから,病院は患者の診療を拒否したらいけないのである.このことを逆手にとって,いつでも患者を診ろという論理は,医療をスーパーマーケットで手に入る商品,お金を払いさえすれば手に入る商品,とみなすことになるのを患者サイドは知らなければならない.もしそうなれば,医療も商売となり,やらなくてもよい医療でお金儲けをする犯罪も生まれる.誌面の制限があるので詳述はできないが,「患者様」と病院側が呼ぶことがこのような誤った主張の原因を作る一端にもなっていることを反省しなければならない.
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