手術テクニック
腹腔鏡下胆嚢摘出術—底部から頸部への剥離
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.230-231
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4425900202
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はじめに
胆嚢結石症に対する標準術式として,腹腔鏡下胆嚢摘出術が広く普及している.しかし,従来の開腹下胆嚢摘出術と比較して,胆管損傷の頻度がやや高率であることが指摘されている.開腹下での胆嚢摘出術では,胆管損傷を避ける目的でCalot三角部で胆嚢管を同定して仮結紮したあとに,胆嚢を底部から頸部へ剥離してきた.そして胆嚢,胆嚢管および胆管の位置関係を確認してから胆嚢管を離断する順行性胆嚢摘出術が慣用されてきた.一方,腹腔鏡下胆嚢摘出術では,始めに胆嚢管を離断したあとに胆嚢を頸部から底部へ剥離する逆行性胆嚢摘出術が一般に行われている.その理由としては,肝臓に胆嚢が付着した状態のほうがCalot三角部の術野の展開が容易で,さらに胆嚢床から胆嚢を剥離しやすいことが挙げられる.
逆行性胆嚢摘出術でも,胆嚢頸部を全周性に剥離し,胆嚢管を胆嚢側から胆管側へ向かって剥離していき,胆管・胆嚢管合流部を確認してから胆嚢管を離断すれば,胆管損傷の危険性は少ない.しかし,炎症が著明でCalot三角部の剥離が困難な例や,腹腔鏡下手術の経験が少ない医師や研修医が手術を行う場合には,胆嚢を底部から頸部へ剥離していく順行性胆嚢摘出術がより安全な手術術式である.
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