別冊秋号 オピオイド
PART3 社会編
32 オピオイドの歴史
小山 なつ
1
1滋賀医科大学 生理学講座
pp.211-218
発行日 2022年9月15日
Published Date 2022/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200314
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オピオイドの語源
日本では栽培が禁止されているケシOpium poppyは,花が散った5〜10日後にできる未熟な果実である芥子坊主に浅い傷をつけると,白い液が滲出してくる。それをへらでかき集めて,乾燥させたものが「アヘン」であり,モルヒネ,コデイン,テバインなどのアルカロイドを含んでいる。アヘンを意味する英語の「opium」は,ケシのジュースを意味するギリシャ語の「oπos」に由来している。それがアラビア語では「afyun」となり,中国の明の時代の本草学者の李時珍(1518-1593)が著した『本草網目』では「阿芙蓉」と記載され,19世紀になって「阿片」と呼ばれるようになった。アヘンには激痛を鎮める効果や多幸感をもたらす効果と,呼吸抑制や依存を引き起こす効果があり,天使と悪魔の両方の側面をもつ。「オピエート(opiate)」とは,モルヒネを含むアヘンアルカロイドやモルヒネ由来の半合成誘導体を表し,「opiate」に「〜のような」を意味する「-oid」が付けられた「オピオイド(opioid)」という用語は,1960年代後半にGeorge H. Achesonが「モルヒネ様活性を有するあらゆる化合物」に対して提唱し使われた。しかし,その後に発見された「オピオイド受容体への結合を介して,モルヒネに類似した作用を示すオピオイド鎮痛薬や,内因性オピオイドペプチドの総称」に意味が変化している。
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