別冊春号 2022のシェヘラザードたち
第13夜 外勤の一人麻酔はリスクがいっぱい—知識と経験,技術をもたないと,起こるべきことは起こる!
徐 民恵
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔科学・集中治療医学分野
pp.75-79
発行日 2022年4月15日
Published Date 2022/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200268
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私の麻酔科医人生は,波乱の幕開けであった。常勤麻酔科医となり初めて自分の名前で麻酔の同意書を取得した患者さんを左肺全摘除術後の「心臓ヘルニア」で失った。また,常勤となって初めての待機では,救急外来から「PCPS*1がうまく回りません」と連絡をもらい,わけがわからぬまま上級医を呼びつつ駆けつけたところ,脱血管が大腿静脈を貫いて動脈に留置されていたことが判明。もちろん私は上司の影に隠れているだけで何もできなかった。
それから数か月がたち,上司からの年賀状には「慣れた頃が危ないから気をつけろ」と書かれ,次の勤務先病院ではベテランの先生が「僕は毎日,“今日も事故を起こさないように”と肝に銘じて診療をしているのだよ」と言うのを聞き,しっかりと自分を戒め,油断せずにやってきたつもりであった。しかし,油断はしなくとも,知識や経験がないと,起こるべきことは起こるものである。
今夜紹介する2症例は,私が大学病院で「中堅」として勤務中に,外勤先で経験したものである。どちらの症例も大学病院のICUに搬送することになった。
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