別冊春号 2022のシェヘラザードたち
第12夜 犍陀多の糸—絶対勝てる試合を絶対勝つための精進が大事
石井 久成
1
1天理よろづ相談所病院 麻酔科
pp.71-74
発行日 2022年4月15日
Published Date 2022/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200267
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今夜紹介する話は私の経験である。多くの麻酔症例中に起きた事象のうち教育的なものは学会発表や症例報告になった。そこまで教育的ではなかったと思われるものの中にも,「あれ,やばかったよなあ」という思いとともに,心の奥底に沈められているものがある。麻酔科医人生を30年近く送ってきた中で起きたこれらの事象も,今はまだ比較的鮮明に記憶しているものが多いが,その記憶もこの先いつまで残っているかわからない。こんなものが誰かのお役に立つのか,はなはだ自信はないが,衆目の面前にそおっと糸を垂らして釣り上げてみよう。『蜘蛛の糸』の犍陀多は,追従して糸を登ってくる罪人を最後の最後で罵ったことで,地獄から抜け出す頼みの蜘蛛の糸が切れた。夜が明けるまで,どうか話の糸が切れませぬように。
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