別冊秋号 —麻酔科医なら知っておきたい—血栓症・塞栓症
PART5 その他の塞栓
29 心臓手術における空気塞栓
石井 久成
1
1天理よろづ相談所病院 麻酔科
pp.213-219
発行日 2021年9月17日
Published Date 2021/9/17
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200247
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
心臓手術における心内空気は経食道心エコー(TEE)による検知が可能となって以来,周術期に麻酔科医が描出・評価を行ってきた1)。1980年代はMモードによる評価であったが,1990年代になってTEEにBモードが導入され,心内空気の詳細な局在ならびに気泡型と貯留型の判別ができるようになった2)。一方,心内空気も含めた微小塞栓が心臓手術の術後認知機能障害(POCD)にかかわっていることは1990年代から示されてきた。術中モニタリングとしてのTEEは直径5μmの気泡まで検知が可能であり3),心臓手術でTEEの気泡描出がルーティンとなるにつれて,心内空気除去の関心が高まった。ところが近年,高齢者の非心臓手術と人工心肺を使用する心臓手術のPOCDに差がないことが示され,POCDは心臓手術,人工心肺だけではなく患者側の要因も含めた多元性の原因によるものと認識されるようになった。しかし,種々の実験ならびに臨床知見により空気塞栓による組織傷害も明らかである。
本稿では,空気による血管の閉塞という特殊性について詳述し,心臓手術における気泡検知の意義について考えてみたい。
Copyright © 2021, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.